ひとりぼっちの進化学

「ひとりが好きな人へ」「ひとりが寂しい人へ」。寝付けない夜に著者が綴った日々のできごと。

七桁の借金を背負うハメになった愚か者の話①(自己紹介にかえて)

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その男、名を空澄遊(からすみゆう)という。

関東在住の28歳男(自称)、都内の病院に勤務する理学療法士である。

 

動かない子供だった。

まだ保育園に入る前の話だ。母が幼い空澄と共に床屋に入ると、店主から「小さいお子さんは動いてしまって危ないから」とカットを拒否されたことがある。

 

しかし母は「いえ、この子は大丈夫です」と男児を床屋の椅子に座らせた。

半信半疑の店主が幼子の頭を刈る間、彼は微動だにすることなく目の前の鏡を見つめていたという。

 

母の半径3m以内から離れない。

 

そんな子供だった。

公園に連れて行っても最初に座らせた場所から動かない。周りの子供たちと遊んだり、蝶々を追いかけて走り回ることもない。

 

周囲のものに対する無関心さはどうやら生まれつきのようだ。

 

泣かない子供だった。

夜泣きもしない。注射をされても母の腕をつねりながらしかめっ面で耐える。

 

感情を表出するのが苦手なのも生まれつきなのかもしれない。

 

兄弟がいないかわりに、従姉妹が遊び相手だった。一つ年下の男勝りな少女と、三つ下の女の子らしい女の子。

静岡の田舎に長期休暇のたび遊びに行った。祖母と、二人に会うために。

 

田舎や田んぼが好きになったのはこの頃だろう。

 

小学校の高学年になる頃、一人で新幹線に乗って静岡に行った。

そのとき母が旅の共にくれたのが「ハリーポッター」だ。本が好きになった原点の記憶である。

 

高校デビューには失敗した。

中学ではそれなりに友人がいたにも関わらず、高校では一人の友も作れなかった。

 

環境のせいだと思った。

空澄が通っていた高校は一種独特の校風を持っていたから。

 

しかし大学でも友人はできなかった。

そこでようやく悟る。おかしいのは自分の方だということに。

 

(つづく)

※不定期掲載